あの背中へ (再編)

ポストの中で ひんやり冷えた 刷りたての新聞を小脇に抱えれば 足もとで ガザレアが 首をもたげて光を探っている 咲こうか 咲くまいか… しゃがんで「おはよう」を言うと ミストな雨が じんわりと滲みてくる こころなしか 辺りがぼんやり霞んでみえる 何故だか不思議な心持ち お盆に伏せたこんもりお山 その裾野まで…
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囚われの彼女

囚われている彼女が 自由になれるには どうしたらいいだろう 膝を突き合わせて パズルの解き方を探すけれど 決め手のピースは彼女が持っているから だれも答えにたどり着けない 高い高い塔にある ちいさな窓を開けて 今日咲いたばかりの花を そっと 投げ捨てる 花は風に身を任せ くるくると踊りながら ゆっくりと落下し…
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希望ふたたび  (再編)

たいせつなものを どこかに置き忘れてきたようで 見上げれば 陽が隠れている 「希望」 駅で視たポスターに デカデカと ソレです! 忘れ物はソレです! 「希望」 遺失物預かり所にあるかな 電話してみようかな はやく迎えにきてって べそかいているかな 「希望」 呟いてしっくりする ほのかに胸の…
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あどけない寝顔

夜更けに 娘からのメールが滑り込んで ひとしきり 言葉を交わす それは とても幸せな時間 わたしの昔を そんなに話してなかったかな 「知らなかった」と、 驚く娘に わたしも驚く 忙しかったから でも 話した気もするな 娘も忙しかったんだ 日々を乗り越えていくことに 目線は ふとした事か…
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雨宿り

雨の音がちいさくなった 雨宿りから解かれたのかな お隣の空き家あたりから聴こえていた 子猫の鳴く声もしなくなった 行き当たりばったり そばの店に飛び込んで 雨止みを待って よく珈琲を飲んだな 本屋で 外の通りの雨具合を視ながら 立ち読みをすることもあった 軒下を借りて雨を見上げれば 見知らぬ人が お入りなさいと屋根…
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山寺の紫陽花まつり (再稿)

遮断機のひっきりなしと 行き交う人々の気忙しさと クラクションのけたたましさやら みんなみんな 置き去りにして 紫陽花が咲誇る山寺を目指す 道すがらの田圃の畔に すっくと立ってるアオサギに驚き 思わず声を上げながら くねくね道に身を任せれば アスファルトの帯はだんだん細くなる 竹林はいつも しんっと静まり返っ…
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愛の在り処を問われたら

愛はどこに在るかと問われたら 愛は たぶんわたしのなかに在ります まず わたしのなかの愛を育てるのが 揺るぎなく わたしを支えてくれると感じます みんな それぞれに胸のなかに忍ばせていますが 表に出し慣れているひともいれば 胸の奥深くに沈んでいて あることすら じぶんで探せない人もいます …
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鳥になるために

雲に隠れそうな 高い高い山の上から 鳥になるために 地面を蹴るヒトがいる 足元に土が無くなって 空に浮かぶ瞬間 なにもかも手放すんだろうな なにもかも地面に置いて 思いきり自由になるんだろうな 色とりどりのとんびの群れが ほわほわと風に乗り旋回する 地面を走る車窓から わたしは見上げ…
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アプリに夢中

なんのてらいもなく みんな手を上げて 好き! 好き! 好き!って 言っている 好きなことを好きと言えるしあわせ なんて 楽しいしかないんだろう  思いきり空に解き放たれる いいね!って 返ってくる ありがとう!って 分かち合う ともだちがいっぱいだ 名前はなあに? どこから来たの?? SOSして教えてもらう …
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心はいつも ずっと傍に

家々の壁が すこしずつセピアに褪せていく レーヨンやポリエステル綿をのばしたような 雲がちぎれて 流されていく 空がずっと透けて見えてた 今日は心地好い一日だった… 夕暮れといっしょにみんな 声がやわらかく降りていく 傾いていく陽を手放して 肩の荷を下ろしていく 路地に漏れて聴こえるニュースの声も なだらかに暮れていく …
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エアプランツのように

あれから あなたのために何ができるだろうと ずっと考えていたんだ 眼を離してた目玉焼きの焦げ付きがなかなか取れない そんな毎日 あなたは ただ居てくれるだけでいいと言う わたしは 何かできないかともがく 幾晩も眠れぬ夜を過ごすうちに ふと気づいたことがあるんだ あなたは もう昔の泣き虫じゃない わたしも もう昔のし…
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わたしを解き放つのはいつもわたし

わたしたちは 解き放たれたこどもだ ひろい森の中を 腕を振って大股で闊歩する 丸太の階段を降りれば そこは地球の緑地だ 今は池のそばだよ 水車小屋が視えるよ トランシーバーで言葉を交わそう 眼の前をしゃぼん玉がぽぽぽぽと流れてくれば 夢中で追いかけてやろう シロツメクサは踏まないよ 踏まないでね キャッチボールの…
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アカシアの森に降る雨が (再編)

アカシヤの森に降る雨が うつくしいのを知っている ドラマに映えるシーンのように 物語の挿絵のように わたしのなかに棲んでいて 束の間 浮かび上がっては 引き出しの奥 帰っていく 枯れた松葉の積もる地面は たっぷりと水をふくんで 踏み入れると ゆっくり沈んだ 葉に溜まる粒のひとつひとつに 森は閉じ込められてい…
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てのひらのたんぽぽ

綿毛は旅立つものだと思っていた…… 公園の片隅で 丸いぽんぽんのたんぽぽの綿毛が  風が吹くのを待っていた ひと息に吹ききれば幸せ 旅立てば別離 ふたつの花言葉の間で揺れていた 幼子が ぽんぽんに頬をふくらませ ひといきに吹いて にっこり笑う 陽なたの板塀の前に居て 懐かしい一枚の写真を想い出した 綿毛は旅…
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恋する彼女

彼女は今も恋をしているんだろうか 仕事をそつなくこなす知的な彼女は 幾度も幾度も恋をして そして 幾度もうなだれていた あきらかに怪しかったり あきらかにずるかったり 騙されているよとたしなめても  誰の話にも耳を塞いでいた とろけるような瞳をして 彼の甘い囁きだけを聴いていた どこまでも 逢いに出掛けて行った…
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かけがえのない瞬き (再編)

飛び石を絶え間なく跳ぶように わたしたち 瞬間を渡っている スライド映画で繋がれた ひとつの物語のように 瞬間が連なっている この前 見とれた桜から もう やわらかな葉が吹き出している つぼみだったチューリップも すうっと首をのばして すぼんだ口を開き ヒラヒラと風にゆらめいている お母さんと手…
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ふしぎな午睡(ひるね)

過ぎた日に訪れた海が 瞼の裏で光っている なぜだろう わたしは鳥になっている 地面を這ってなんていない 高いところから 見渡しているんだ 島並みが息をのむほど美しかった 薄暗い螺旋階段を登って 灯台の中ほどに出れば 吹き付ける風が耳元でごうごうと鳴り 口は塞がれるようだった たっぷりの蒼い水面に 幾筋も潮の道がついてい…
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宇宙の塵になってしまえ!

空を見つめている時は どこかへ行ってしまいたい時だって 空に逃げ場所を探しているんだ ここではない何処かへ 空は広くて自由だから 遠いむかし 空に吸い付いたように 眼を外せないことがあった ここではない何処かへ 心を必死に逃がしていたんだ やがて訪れる別離が怖くて やりきれないことがあるよ 言葉に…
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鏡の中のあなた

忘れられる訳がない 花を見ればあなたが居る わたしの食の好みも仕立て方にも いつもあなたが居る あいさつのしかた ふとんの上げ下ろし 部屋の風の通し方 物事の筋の通し方 なにもかも わたしの中にはあなたがいる いつもそばに居てくれる 娘と話す時の わたしの口からこぼれる言葉は どこかで聞いたことがある いつのま…
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ひとりよりふたり ふたりより三人

玄関先のヒイラギの葉のトゲトゲが無くなってきている 家を護ってもらおうと植えたのに、それじゃあ…… ヒイラギも歳相応に 丸くなっていくのかなあ お向かいの一人暮らしのおばあちゃんが 戻って来られた 歩くのはまだつらそうだけど、声はしっかりされている よかった お隣のおばあちゃんは二年前に出られたきり お家はからっぽ…
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