取越し苦労

なんにも作れなかったあなたが 「もう 食べられる?」 と わたしを呼ぶ テーブルに あなた手製の朝ごはんが光っている すごく長い道のりのようでいて いつのまにか…の ようでもあって おいしいね と 微笑んで おいしいね と うなずき合う いつか どちらか一人の食卓になる日々も そんなに遠いことじゃない そんな…
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瞬間

いつだったか… 「ボケるのはええで なんもわからんようになるんやで なあんも忘れてしまうんや  こんな気楽なことがあるかあ なあんもやで 全部やで」って そんな言葉を聞いた あんまり何度も繰り返すから 困ったひとだなあ と 思った 計り知れない苦労を 誰かに負わせて そんな気楽は無いだろうって 私は ずっと自分を判…
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初詣で

大晦日の夜が 極まっていく 急かれるように 重ね着をして  雪だるまになって 人通りの捌けた夜を往く 信号の青は なかなか来ない 見上げれば 16番目の月が ずっと 私達の上で輝いている 造り酒屋の在る路地へと曲がり 猫坂を上がる時  ふと あなたが呟いた 「知らない町を 歩くようだ。」 現実的なあなたの口か…
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雲よ 流れろ

風の神さまが走られるから お正月は 雲も忙しい お陽さまの前を横切るたんび ストンッと 部屋が夕昏になる 気持ちもズンッと 落ちていく 雲が捌けて 陽が降れば 窓辺の花も にっこり笑う ある時~ ない時~ の まだら模様に わたしの気持ちも忙しい 雲に傾いて 翳るのを予期して虚ろうか 陽に傾いて 晴れるのを予…
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仕切り直し

もうすぐ 年が暮れるからって あなたが磨いてくれた窓のこちら側で 子犬のように並んで 鉢植えの花が寒空を視ている 後ろ姿が かわいい 冷たい風が吹けば 枯れて終うのは自然の摂理だけど そばに居て欲しくて 硝子の内側に入れた 我がまま 南国の花ブーゲンビリアは置き場所を変えると ほとんどの花と葉を落とすいつも いさぎ…
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響き

一軒の家を隔てて 前には 線路が走っていた 数分置きにやってくる 規則的な振動と騒がしさと 知らず知らずに 終電に始発は時計代わり ふくろうのため息と鶏の雄叫び あの頃は 憂いたこともあったけれど 今は 想いふくらむ 夜が更けて 街が寝静まると 懐かしい列車のリズムが 遠くから響いてくる 枕に 耳を着けて眼…
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意識

いつも 気になるもの 鳥の翼 プラスチックのような脚 魚のひれ うろこ エラの閉開 猫の瞳 しっぽのクネリ 犬の耳 心臓の鼓動 兎の鼻 背中の丸み ネズミの手 忙しい前歯 イルカの笑い顔 話し声 トンボの複眼 首の捻り などなど それから  あなたの枯れた声 咳の音  わたしの脳トレ 筋トレ 人間の五感と…
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シーラカンス

「いつか解かるよ。」と 言ったら 「いつかの話ばかりする」って 苛立った顔をした 今はまだ 判らないことが沢山あるよ 発展途上の道半ばだもの 言葉だけじゃ 仕方ないんだ 時を重ね 少しずつ登り詰め 坂の上に立った時 初めて視える景色があるんだ 昔 やっぱり私も解らなかった 今だから解る感情がある みんな 待てな…
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本能

さっきから ぱんぱんっ!と音が鳴っている ビービー弾で狙われているみたい 身体を硬くして 辺りを窺う 逃げた方がいいのかな お隣で 焚火の薪が爆ぜてるのかな 家宅捜索をしたら 犯人は鞘のなかの花の種だ 窓際で陽を浴び 鞘がふたつに割れている お皿の上でくるくると カールしたマカロニだ 螺旋によじれて寝そべっている …
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聖夜の夜更け

叩け 叩け 叩け 心の扉を叩け 今 どこで考えた? そう 身体の高いところに在る その 頭脳のなかで ずっと そこが主役だ 出てきた言葉は 的をすこし外れているよ 自分では気づかない でも ほら  眼の前に居る人が すこし首をひねっているよ 怪訝な顔をしているよ 自分のことなのに まるで誰かがもうひとり居る…
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想い出が尽きない夜を

ああ よかったな スマホの操作を間違えたって スマホの画面に あなたのビックリ顔が現れた わたしは とにかく可笑しくて可笑しくて ずっと 笑いが止まらないよ 嬉しすぎて 笑いが止まらないよ そうか…… 人は嬉しすぎると笑いが止まらないんだな そう言えば 子供って確かそうだなあ 嬉しいとクニャクニャして やたら笑っ…
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素顔の野菊 (再編)

薄日射す路地を行けば 群れ咲く野菊 いたずらっ子の瞳をして フェンスから顔を覗かせ 服の裾 つかもうと手を伸ばす 冬枯れの野に入れば 素顔の野菊 支え合いもつれ合い 冷えた土に横たわり 流れる雲を 眼で追っている 居たたまれず いくらかを手折り持ち帰り ガラスの瓶の水に挿せば 慣れない部屋に惑って ひ…
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たからもの

「こども扱いしないで」 と あのこが言ってる 「いつまでもこどもだと思ってるんだから」 と また あのこも言ってる こどもでいられることは どれほど 安堵なことだろう それを知らない だれもが大人になれと言う もう こどもじゃないんだよと言う おとなの顔をして おとなのふりをして それでも いつまで経っても …
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だいきらい

吹っ切る 吹っ切れない  吹っ切ります 吹っ切れ ずっと ぐるぐる考えてしまうんだ メビウスの輪のように 終わりが無いよ “考え癖”って言うらしい ほんとは何でも 至極シンプルなはずなんだ それを 複雑な迷路にしてしまってるんだ じぶんから こどもが泣きながら 「大嫌い!」と叫んでいる ストレートだ…
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手が届く日まで

冬の くぐもった鈍色の空を 旅客機が泳いでいく おもちゃみたいにミニチュアだから 手を伸ばせば つまめそうだ 異国へ行きたいなあ いつのまにか世界は近くなって 空港へ行って 路線は選び放題なはず…だな それなのに このごろ なんだかすごく遠い さみしいな 物語のようなホテルに泊まって 視たことない風景の窓を…
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それぞれのデッサン

あの駅前のロータリーで待ち合わせて 初めてデートした時から わたしたちは 互いのデッサンを始めた ナナメに向き合って 食事をして おぼろげな輪郭だけ 逢うたびに幾らかずつ 鮮明になっていく 笑った顔 怒った顔 惑った顔 哀しい顔 記憶の襞に どんどん書き込まれていく 黄や赤や灰に蒼と うっすら彩色も浮かんでくる …
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バリア

あなたが 花をみて“かわいいねぇ”って つぶやく あなたの横顔をみて (ああ よかったな)って 思う 心にバリアを打ち建てて ただ やり過ごす日々 分刻みで追われる日々 護ることで終わる日々 花は あなたを見上げているけど モノクロで あなたの心に届かない あなたが 花をみて“調子いいね”って 微笑む …
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憧れ

あの頃 母の箪笥の上 乗っかってる飾り棚に 瞳は釘づけだった 和服姿の人形や 鋳物に木彫り それぞれが くっついたり離れたり 硝子戸を隔てて わたしを見下ろしていた ショーウィンドウを覗くように 伸びあがって 時には椅子をはこんで 硝子を開けたり そっと 手に取ってみたりした 母と過ごしたあの部屋へ 眼を閉じ…
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大地の夕暮れ

目覚めて眠る 絶え間ない循環  水槽で暮らす熱帯魚のあぶく こころが揺さぶられる 澄み渡るには 極々シンプルなことだ と そんな扉の前に立っている 一面のススキが原で 夕暮れを待つ 雲間から光が射した瞬間 辺りは黄金色に輝き もう なにもかも許された気がした 技術の進歩はめざましく 眼を瞠るけれ…
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とりとめのない話

水の流れない沼の 表に おおきな ちいさな 円盤が 絶え間なく生まれては ひろがり 融けていく 樹々は雫を溜めて 重たそうにうなだれている わたしの気配に気付いたのか 魚が 水面に黒く影をつくった 珠には 空を視においでよ 瞳が濁ってしまうよ 水面に落ちた わたしの傘と わたしの影が 逃げて 樹々と…
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