恋する彼女

彼女は今も恋をしているんだろうか 仕事をそつなくこなす知的な彼女は 幾度も幾度も恋をして そして 幾度もうなだれていた あきらかに怪しかったり あきらかにずるかったり 騙されているよとたしなめても  誰の話にも耳を塞いでいた とろけるような瞳をして 彼の甘い囁きだけを聴いていた どこまでも 逢いに出掛けて行った…
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かけがえのない瞬き (再編)

飛び石を絶え間なく跳ぶように わたしたち 瞬間を渡っている スライド映画で繋がれた ひとつの物語のように 瞬間が連なっている この前 見とれた桜から もう やわらかな葉が吹き出している つぼみだったチューリップも すうっと首をのばして すぼんだ口を開き ヒラヒラと風にゆらめいている お母さんと手…
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ふしぎな午睡(ひるね)

過ぎた日に訪れた海が 瞼の裏で光っている なぜだろう わたしは鳥になっている 地面を這ってなんていない 高いところから 見渡しているんだ 島並みが息をのむほど美しかった 薄暗い螺旋階段を登って 灯台の中ほどに出れば 吹き付ける風が耳元でごうごうと鳴り 口は塞がれるようだった たっぷりの蒼い水面に 幾筋も潮の道がついてい…
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宇宙の塵になってしまえ!

空を見つめている時は どこかへ行ってしまいたい時だって 空に逃げ場所を探しているんだ ここではない何処かへ 空は広くて自由だから 遠いむかし 空に吸い付いたように 眼を外せないことがあった ここではない何処かへ 心を必死に逃がしていたんだ やがて訪れる別離が怖くて やりきれないことがあるよ 言葉に…
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鏡の中のあなた

忘れられる訳がない 花を見ればあなたが居る わたしの食の好みも仕立て方にも いつもあなたが居る あいさつのしかた ふとんの上げ下ろし 部屋の風の通し方 物事の筋の通し方 なにもかも わたしの中にはあなたがいる いつもそばに居てくれる 娘と話す時の わたしの口からこぼれる言葉は どこかで聞いたことがある いつのま…
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ひとりよりふたり ふたりより三人

玄関先のヒイラギの葉のトゲトゲが無くなってきている 家を護ってもらおうと植えたのに、それじゃあ…… ヒイラギも歳相応に 丸くなっていくのかなあ お向かいの一人暮らしのおばあちゃんが 戻って来られた 歩くのはまだつらそうだけど、声はしっかりされている よかった お隣のおばあちゃんは二年前に出られたきり お家はからっぽ…
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お気に入り

なんだ いつのまにか私の好きなものばかりじゃない あなたのお気に入りがぜんぜん無いよ もっとなにか置いてよ リビングを見渡せば わたしのお気に入りだらけ あなたのは そうだな…テレビくらいかな……やっぱり そんな言いがかりをつけたら あなたは 首をかしげて苦笑いしてた 日が暮れて灯りをつければ 窓ガラスがスクリーンに…
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天気雨

夕刊がポストに落ちたよ 今日の日が傾いていくね 東の空にちぎり絵のような お月さまが浮かんでいるよ もうおうちへ帰りましょう って やさしい声が スピーカーから流れているよ 撫子の花が咲いたよ 緑の葉に赤が醒めるようだよ 夕べは少し雨が降ったんだね 朝刊を取って 車のフロントガラスに 水滴をみつけ…
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がまんが足りない

ああ 失敗しちゃったな…… 一日のうちに何度も届く“だいすきだよ”のメールは (あいたいよ) (むかえにきてね)のメッセージだったんだよね ちゃんと解っていたんだよ だからずっと “あいにいくよ だいすきだよ”って 返事をしてた ちびもわかっていたんだよね “やったー!!”って よろこびながら 今は 扉を開けちゃ…
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ついたちはいつも

ついたちはいつも ふたり ここにこうして 石造りの鳥居をくぐると 手水鉢がみえる 手拭いを渡して わたしが水鉢の後ろに回る あなたはひしゃくをかまえてスタンバイする あなたの唇の端は すこし引き締まってみえる 栓を軽くひねってるつもりだけれど 水は真鍮の鶏のくちばしからほとばしり うつくしい放物線を描いて あな…
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声を忘れていなければ

頃合いに大気がぬるみ 寒さわすれる夜が巡る 五日目に風が吹き 十日目に雨が降る この頃は 束の間の凪日和 とろり波間に 浮かんで眠る 眠りに落ちるまで 憶えの部屋のドアを開ける あの口癖とその調べ ころころころがる笑い声 お腹の底から響く声や 叱りながら許してくれてる甘い声 ひとりひとりの面影が ひととき寄せ…
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わたしも連れてって

時の流れは のそりのそりと かたつむりのようだったり 一瞬でとどく ひかりのようだったりする 静まりかえった休日の路地に カラッと乾いた風が吹く 各駅停車に乗り換えたように 毎日はゆるやかに過ぎて行く 朝早くから 早口で言葉を折りたたむように鳴く鳥の声がする いろんな声音でとにかく賑やかだ 玄関先を掃く手が止まる …
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知りたいことは山ほどある

季節がぐるりと巡って 誕生日がやってきた 早起きをして お味噌汁をつくる 日付変更線を越えてすぐメールをくれたあなたに ありがとう これからもよろしくねって 朝ごはんをつくろう 相変わらず わたしが突っ込みであなたはボケてね これからもふたり たくさん笑おう ジェスチャーゲームして笑おう 今できることをひたすらがんば…
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瞳を開けたままみる夢

通りの東と西 どちらの先にも見透かせば海が見える そんな漁師町の片隅で彼女は眠っている Webフォトから 一年前に訪れた旅の写真が届いた 方々を巡った果てに 念願だった彼女が生まれ育った町に辿り着いた 吹き荒れた雨風が止んで ふしぎなくらい静かだった 潮の香りが通りにあふれている 彼女が愛した街を歩き かつて生家の…
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こどもの時間

「うごいているよ!」 ちびからのメールには 器のなか ぷくぷくあぶくを出してるシジミの動画 (今夜はシジミのお味噌汁だな) 撮っているちびの影と みつめているちびの息づかい 受取りながら いっしょに眺める 「生きているんだねぇ」と、送れば 「そう!」と、生きのいい返事 昨夜は 大量な採れたてのワカメを グッとつか…
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美しい星

11光年先に 地球そっくりの星があるらしい  大きさもほぼ 気温もほぼほぼ 生命体が居るのなら どんな暮らしをしているのかな ソチラもコチラに気づいてるのかな 住み心地はいかが?なんて 興味津々 ドキドキワクワク そっとコチラを窺ってるかな 毎日空を視ていると  雲の隙間を抜けてって コチラを覗いてみたくなる 地球儀…
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母のふところ

小さい方の娘が  ひととき わたしのふところにもぐり込んで また フィールドへもどって行った 見送る道すがら  前をじっと見つめながら 至極自然に 両の手でわたしの手を包んだ そして  ああ この手だ…と 言った こう見えてわたしは照れ屋だから むかしは するりと逃げてしまったけれど 今はもう 後に悔やんでし…
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痛み分け

春の嵐に 桜は雪のように降った むかし 桜が散っていくさまに「あぁ」と思わず漏れた声から 「あわれ…哀れ」という言葉が生まれたらしい 桜はほろほろと流されて 連れていかれてしまった 嵐になる前に 玄関先の樹を刈り込んでよかった 葉の申し送りで これもまた雪のように落ちてしまう 斜交いの奥さんが玄関先をまいにち掃かれるので…
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お薬をもらいに

服の袖越しにボタンを押した エレベーターのドアが開いたとき  一瞬 たじろいでしまった からっぽの待合室  長く降りたブラインドが風によじれていた いつもにこやかな受付の方は 奥の方 三人くらい団子になっている おびえた瞳で (エタノールを押して)と身振り手振り 診察はスルーになって先生には逢えなかった 希望の…
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風のゆくえを追っていく

今日の公園はにぎやかだ  なんだかとてもはずんでいる 聞き流そうとして 二度見した もうとっくに 公園を卒業してしまった男子達が 声変りをした声で ちいさな子供たちを束ねている ちびっこギャングたちは 少し戸惑いながら けれど嬉しそうにうなずいて そのうしろを追いかけていく あれ? これはかつての…縦のつながり…
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