いま ひとときの残像を

朝御飯もそこそこに、
お医者さまの往診さながら。
「どんな具合ですか。」
おでこを近づけて 顔色をうかがう。
「明日まで、様子をみますか…。」

回診は 日に幾度も。
春花の 鉢を空けるのはなかなか。

「もぅすこし、咲いて居たいですか……。」

苺のジャムクッキーだったデイジーも、
裁縫箱の待ち針みたい。 
ちっちゃく ちっちゃく……。
なのにまだ、いくつも蕾をもたげて。

見るに忍びなく、
「ありがとねぇ」
今朝 さよならを言った

マーガレットみたいなノースポールも、
眼をこらしてみるほどで
こびとの国に咲くみたい。
健気な彼女たちを ガラス瓶の水に寄せて。

後ろ髪引かれながら、
「がんばったねぇ」
午後 さよならを言った


いっしょに冬を越した彼女たちの
回診は もぅすこしつづく。

からっぽのプランターと花ポットが、
庭の隅っこに積まれていく。
心配そうに、わたしの顔色をうかがっている。

不器用だから まだ束の間は、
咲き誇る春 彼女たちの残像を。

やがてわたしも、夏支度に。
つぎの出番を 待っててね。

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